低リスク女性では乳がん検診をしない方が費用効率的
Cost-effectiveness and Benefit-to-Harm Ratio of Risk-Stratified Screening for Breast Cancer: A Life-Table Model
背景
乳がん検診は乳がんによる死亡を減らすことが示されているが過剰診断の問題もあり、ベネフィットとハームの兼ね合いが重要となる。イングランドUniversity College LondonのPashayanらは、イギリス女性364,500名の仮説コホートにおいて、検診なし・年齢ベース検診(50〜69歳に3年毎マンモグラフィ検査)・リスク別検診(リスクスコアが高い女性のみ)のベネフィット/ハーム比と費用対効果を比較評価した。
結論
リスクスコアの閾値を引き下げるに従い、検診プログラムの費用は直線的に増加したが、35パーセンタイル以下の閾値ではQALY増加は見られなくなった。リスク別検診シナリオでは、70パーセンタイルで純金銭ベネフィットが最大化した。年齢ベース検診と比して、32パーセンタイル・70パーセンタイルでの検診は各20,066ポンド・537,985ポンドの節約となり、過剰診断も26.7%・71.4%減少、一方で予防しうる乳がん死亡はそれぞれ2.9%・9.6%少なくなった。
評価
従来のone-size-fits-allな検診戦略の限界を、多遺伝子リスク情報に基づく精密化によって乗り越えようとする提案であるが、医療保険システムでの広範な実装にはさらなる検証と議論を必要とする。