外科医の手術成績を公開すると死亡率は?
Effect of public reporting of surgeons’ outcomes on patient selection, “gaming,” and mortality in colorectal cancer surgery in England: population based cohort study
背景
イギリス国民保健サービス(NHS)は、2013年から9領域の外科手術について死亡率データを公開しているが、手術成績の公開がもたらす影響については議論がある。イギリスRoyal College of Surgeons of EnglandのVallanceらは、National Bowel Cancer Auditで2011〜2015年に大腸がん診断を受けた患者111,431名のデータを基に、この問題を検討した。
結論
メジャ―な切除手術を受けた患者の割合は、アウトカム公開の前後で変わらなかった(63.3% vs. 63.2%)。Major切除のうち、待機手術の割合も変化はなかった(84.5% vs. 84.4%)。患者背景・腫瘍に基づく予測90日死亡率は変化しなかった(2.7% vs. 2.7%)一方、実測90日死亡率は公開導入後に低下した(2.8% vs. 2.1%)。変化点分析によれば、この低下は既存の死亡率低下傾向を上回るものであった。
評価
高リスク手術の回避やデータ操作などが導入に際して懸念されていたが、これらについては存在するという証拠は見られなかった。死亡率の低下傾向は待期手術に限られており、手術前の準備や周術期管理の向上が寄与したと考えられる。