なぜDM患者は動脈瘤になりにくいのか:CDA1仮説
Diabetes Reduces Severity of Aortic Aneurysms Depending on the Presence of Cell Division Autoantigen 1 (CDA1)
背景
糖尿病(DM)患者は動脈瘤リスクが低いことが知られるが、メカニズムは不明である。豪Monash UniversityのChaiらは、ノックアウトマウスを用いた実験により、cell division autoantigen 1(CDA1:DMでTGF-βシグナルを増強する)が動脈瘤抑制因子である、という仮説を検証した。野生型・CDA1 KO・ApoE KO・CDA1/ApoE double knockout (dKO) マウスにSPZDMを誘導した。
結論
ApoE KO・野生型DMマウスでは動脈瘤を認めなかったが、dKO・DMマウスの40%で動脈瘤を認めた。動脈瘤ではGF-βシグナル、コラーゲンの発現がともに低下しており、動脈壁へのマクロファージ浸潤やMMP-12の発現が増加していた。DMは、アンギオテンシンIIによる実験的動脈瘤形成も防護した。腹部大動脈瘤患者の生検で、動脈CDA1発現の最大70%のダウンレギュレーションを認めた。
評価
DMと動脈瘤の負相関は興味深い現象で、DMで使用されるメトホルミンの側効果ではないか、という仮説も提起されている(https://doi.org/10.1016/j.jvs.2016.02.020)。ここでのTGFシグナル仮説も魅力的で、何らかの決定研究が必要となった。