ARDSにおける低一回換気量の効果はエラスタンスにより異なる
Effect of Lowering Vt on Mortality in Acute Respiratory Distress Syndrome Varies with Respiratory System Elastance
背景
ARDS患者における人工呼吸器誘発肺損傷(VILI)を避けるために低一回換気量(Vt)が推奨されているが、近年の研究ではVtよりも駆動圧ΔP(=Vt/呼吸器系コンプライアンス)の関与が重要であることが明らかにされている。カナダUniversity of TorontoのGoligherらは、ARDSおよび急性低酸素性呼吸不全患者を対象に、低Vt換気戦略と高Vt戦略を比較したランダム化比較試験5件の二次解析を行い、Vtとエラスタンス(弾性抵抗、コンプライアンスの逆数)の相互作用を検討した(n=1,096)。
結論
38%が60日以内に死亡した。低Vt換気戦略による死亡率の改善効果が、エラスタンスによって異なる事後確率は93%であった(cm H2Oあたりの相互作用オッズ比0.80)。死亡の絶対リスクが1%以上低下することの事後確率は、エラスタンスが低値グループ(32%)で55%、中値グループ(46%)で82%、高値グループ(22%)では92%であった。また絶対リスクが5%以上低下することの事後確率はそれぞれ29%、58%、82%であった。
評価
低い駆動圧の重要性を明らかにしたAmatoら(https://doi.org/10.1056/NEJMsa1410639)による検証で、低Vtの有効性があくまでエラスタンスに依存することを示唆した。駆動圧の意義をさらに強調する知見と言える。