ARDSにおける低一回換気量の効果はエラスタンスにより異なる
Effect of Lowering Vt on Mortality in Acute Respiratory Distress Syndrome Varies with Respiratory System Elastance

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine
年月
June 2021
203
開始ページ
1378

背景

ARDS患者における人工呼吸器誘発肺損傷(VILI)を避けるために低一回換気量(Vt)が推奨されているが、近年の研究ではVtよりも駆動圧ΔP(=Vt/呼吸器系コンプライアンス)の関与が重要であることが明らかにされている。カナダUniversity of TorontoのGoligherらは、ARDSおよび急性低酸素性呼吸不全患者を対象に、低Vt換気戦略と高Vt戦略を比較したランダム化比較試験5件の二次解析を行い、Vtとエラスタンス(弾性抵抗、コンプライアンスの逆数)の相互作用を検討した(n=1,096)。

結論

38%が60日以内に死亡した。低Vt換気戦略による死亡率の改善効果が、エラスタンスによって異なる事後確率は93%であった(cm H2Oあたりの相互作用オッズ比0.80)。死亡の絶対リスクが1%以上低下することの事後確率は、エラスタンスが低値グループ(32%)で55%、中値グループ(46%)で82%、高値グループ(22%)では92%であった。また絶対リスクが5%以上低下することの事後確率はそれぞれ29%、58%、82%であった。

評価

低い駆動圧の重要性を明らかにしたAmatoら(https://doi.org/10.1056/NEJMsa1410639)による検証で、低Vtの有効性があくまでエラスタンスに依存することを示唆した。駆動圧の意義をさらに強調する知見と言える。

関連するメディカルオンライン文献

大規模臨床試験、新規の薬・機器・手法・因子・メカニズムの発見に関する文献を主に取り上げ、原文の要約と専属医師のコメントを掲載。

(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)