受診時hsTnI結果による早期心筋梗塞除外で滞在期間・入院が減少:3万人規模HiSTORIC試験が示す
High-Sensitivity Cardiac Troponin on Presentation to Rule Out Myocardial Infarction: A Stepped-Wedge Cluster Randomized Controlled Trial

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
Circulation
年月
June 2021
143
開始ページ
2214

背景

急性冠症候群(ACS)が疑われる患者の診察プロセスにおいて心筋トロポニン検査は不可欠な一部となっているが、トロポニン検査に関するガイドラインは観察研究に多くを負っている。イギリスUniversity of EdinburghのAnandらは、スコットランドの急性期病院7施設の救急部門において、ACS疑い患者で症状発現後6-12時間後のトロポニン結果(99パーセンタイル以下)によって心筋梗塞を除外する前介入期間から、来院時の高感度トロポニンI濃度が5 ng/L未満で心筋梗塞を除外する介入期間に段階的に移行する、ステップウェッジ方式クラスターランダム化試験HiSTORICを実施した(n=31,492)。

結論

滞在期間は前介入期間の10.1時間から、6.8時間に短縮された(調整幾何平均比0.78)。退院患者の割合も50%から71%に増加した(調整オッズ比1.59)。安全性アウトカムである30日以内の退院後心筋梗塞・心臓死についての非劣性は示されなかったが、早期除外戦略が優位な傾向にあった(前介入期間0.4% vs. 介入期間0.3%)。1年時点での安全性アウトカム率は2.7%、1.8%であり(調整オッズ比1.02)、再来院や全原因死亡に差はなかった。

評価

高感度トロポニンによる単回除外戦略の非劣性は示されなかったものの、その安全性と有効性を実証する大規模RCTエビデンスとなった。

関連するメディカルオンライン文献

大規模臨床試験、新規の薬・機器・手法・因子・メカニズムの発見に関する文献を主に取り上げ、原文の要約と専属医師のコメントを掲載。

(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)