ICUサバイバーでは自死・自傷リスクが2割増加する:カナダ調査
Suicide and self-harm in adult survivors of critical illness: population based cohort study
背景
集中治療医学の大きな進歩により、ICU入室患者の生存率は高まっているが、ICUサバイバーでうつ病やPTSDのリスクが高まることも示唆されている。University of OttawaのFernandoらは、カナダ・オンタリオ州における2009年1月から2017年12月にかけての連続した成人ICUサバイバー(n=423,060)を対象とする集団ベースコホート研究を実施、ICU入室を必要としなかった生存退院者との比較における自殺・自傷イベントとの関連を検討した。
結論
ICUサバイバーの自殺、自傷、およびその複合発生率は、10万人年あたり41.4件、327.9件、361.0件であり、非ICUサバイバーでは16.8件、177.3件、191.6件であった。重み付きモデルを用いた解析では、ICUサバイバーの自殺リスクはハザード比1.22、自傷リスクは1.15であった。自殺・自傷と関連する因子として、うつ・不安の既往(ハザード比5.69)、PTSDの既往(1.87)、侵襲的換気(1.45)、腎代替療法(1.35)があった。
評価
ICUサバイバーでは集中治療後症候群(PICS)の一部として不安や抑うつ、さらにPTSDなどがしばしば見られるが、これらが自殺・自傷のリスク増にもつながることを、大規模な集団ベース研究から明らかにした。精神疾患の既往やICUでの重症度因子がリスク因子として特定されており、有効な早期介入の検討に役立つだろう。