救急ACS疑い患者で単回の従来トロポニン検査による退院は安全か
Single vs Serial Measurements of Cardiac Troponin Level in the Evaluation of Patients in the Emergency Department With Suspected Acute Myocardial Infarction
背景
近年のエビデンスは、救急の急性心筋梗塞疑い患者において単回採血の高感度トロポニン検査による除外が可能であることを示唆しているが、高感度トロポニン検査は全ての施設で利用可能なわけではない。Kaiser Permanente Southern CaliforniaのWassieらは、南カリフォルニア15ヵ所のコミュニティ救急部門で、HEARTスコアにより急性冠症候群が疑われ、初回の従来トロポニンI値が検出レベル(0.02 ng/mL)未満であった成人患者の後向コホート研究により、単回または連続測定の従来トロポニン検査のアウトカムを調査した(n=27,918)。
結論
初回トロポニン値が検出レベル以下であった患者のうち、51.8%が退院し、48.2%が連続してトロポニン測定を受けた。一次アウトカム(30日以内の急性心筋梗塞または心臓死)率は、単回測定群0.4%、連続測定群0.4%であった(調整オッズ比1.41)。単回測定後に退院した患者では冠動脈バイパス術(0.24)や経皮的冠動脈造影(0.46)の実施率が低かった。
評価
単回の従来トロポニン検査で退院した患者では、高度な介入が少なかったが、30日以内の重大アウトカム率に差はなかった。高感度トロポニン検査が利用できない施設でも、適切なリスク層別化スコアと組み合わせることで単回の陰性結果で患者を帰宅させることが可能と思われる。