敗血症性ショックでのNad前のフェニレフリンIVプッシュは安全なのか:コホート研究
Effect of Phenylephrine Push Before Continuous Infusion Norepinephrine in Patients With Septic Shock
背景
敗血症初期蘇生における昇圧薬の第一選択はノルアドレナリンであり、フェニレフリンについては十分なエビデンスがないが、昇圧薬の持続投与に先立って速やかな昇圧のためにフェニレフリンのIVプッシュ投与を行う施設もある。Medical University of South CarolinaのHawnらは、敗血症性ショックによりノルアドレナリン投与を開始した成人患者(n=1,317)の多施設後向コホート研究を行い、ノルアドレナリン投与前のフェニレフリン投与が血行動態安定性に与える影響を調査した。
結論
181名がフェニレフリンのプッシュ投与を受けており、このうち141名を、投与を受けなかった患者282名と傾向スコアによりマッチングした。3時間目までの血行動態安定(血管作動薬の投与量を増やさずに6時間以上65 mmHgを維持)の達成率は、フェニレフリン投与患者で高く(28.4% vs. 18.8%)、フェニレフリン投与は3時間以内の血行動態安定と関連していたが(調整オッズ比1.8)、12時間以内では有意に関連しなかった(1.42)。またフェニレフリンのプッシュ投与は、ICU死亡率の上昇と関連した(調整オッズ比1.88)。
評価
フェニレフリンのプッシュ投与は短期的には血行動態の安定をもたらしたものの、ICU死亡率の上昇と関連した。プッシュ投与が考慮される患者はそもそも状態が悪く、傾向マッチングでもこうした交絡変数を除去し得なかった可能性もあるが、プッシュ投与への注意を促すエビデンスである。