救急患者の半数で血圧上昇が見られるが、多くは重要でない
Elevated Blood Pressures Are Common in the Emergency Department but Are They Important? A Retrospective Cohort Study of 30,278 Adults

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
Annals of Emergency Medicine
年月
April 2021
77
開始ページ
425

背景

救急部ではしばしば無症候性の高血圧が発見されるが、何らかの介入を必要とするのか。カナダUniversity of AlbertaのMcAlisterらは、同大学病院で2016年に治療・退院したすべての成人患者の電子カルテと、前後2年間の州内全医療機関の受診記録を対応させる後向コホート研究を行い、救急での血圧測定値と退院後の心血管アウトカムとの関連を検証した(n=30,278)。

結論

48.6%で血圧の上昇が認められ、そのうち72.9%は高血圧診断を受けたことがなかった。高血圧診断歴がなく救急で血圧160/100 mmHg以上と測定された3,480名のうち、26.1%は2年以内に慢性高血圧の診断を受けるか、降圧治療が行われた。高血圧診断歴がなく救急で血圧160/100 mmHg以上と測定された患者では、120-139/80-89 mmHgの患者と比して複合心アウトカム(脳卒中・TIA・急性缶症候群・心不全・死亡)の発生率が高かったが、年齢・性別・糖尿病・心房細動・心血管疾患既往について調整するとリスクの上昇は認められなかった(調整ハザード比0.84)。

評価

救急で発見された高血圧が単独では不良な予後と関連しないことを確認した。ACEPは、無症候性高血圧を直ちに降圧する必要はなく、紹介と外来でのフォローアップにつとめるよう推奨しており、本研究はこの推奨を裏付けるものと言える。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)