急性低酸素性呼吸不全でのPaO2目標値、60 mmHgでも死亡率変わらず:HOT-ICU試験
Lower or Higher Oxygenation Targets for Acute Hypoxemic Respiratory Failure
背景
近年、重症患者における酸素療法は保守的な目標値の方がよいとするエビデンスが多く現れている。デンマークAalborg University HospitalのSchjorringらは、最近12時間以内にICUに入室し、酸素10 L/minまたはFiO2 0.5以上の酸素を必要とする成人患者を、PaO2で60 mmHgまたは90 mmHgを目標値とする酸素療法に割り付ける多施設ランダム化比較試験HOT-ICUを実施した(n=2,928)。
結論
90日時点で低値酸素目標群の42.9%、高値酸素目標群の42.4%が死亡していた(調整リスク比1.02)。生命維持を必要としない生存日数の割合、退院後生存日数の割合に差はなく、ショック、心筋虚血、脳梗塞、腸管虚血の新規エピソードにも差はなかった。
評価
ARDS患者を対象に保守的酸素群を55-70 mmHgに設定したLOCO2試験では死亡率の悪化がみられていたが、この試験では60 mmHgの目標値は安全であった。ただ全体としては保守的酸素と通常酸素に差がなかったICU-ROX試験でも、一部サブグループではアウトカム悪化の可能性が示唆されており、安全な集団を慎重に探索する必要がある。