重症COVID-19におけるせん妄・脳症
Delirium and encephalopathy in severe COVID-19: a cohort analysis of ICU patients
背景
呼吸器へのウイルス感染は中枢神経にも影響を及ぼすことがあり、新型コロナウイルス感染症COVID-19でも報告が相次いでいる。フランスHopitaux Universitaires de StrasbourgのHelmsらは、同大学病院の2つのICUに2020年3月3日から5月5日までに紹介されたSARS-CoV-2による急性呼吸窮迫症候群患者における、せん妄および神経学的異常所見の発生率を報告した(n=140)。
結論
神経学的検査で正常だったのは15.7%で、84.3%はせん妄を発症した。69.3%は、高用量の鎮静・筋弛緩にもかかわらず予期せぬ不穏・興奮を呈し、63.6%は皮質脊髄路徴候が認められた。脳MRIは28名で実施され、17名(60.7%)ではクモ膜下腔拡大、8名で大脳実質内の白質異常、17/26名(65.4%)では還流異常が認められた。脳波検査を受けた42名では非特異的異常、両側前頭葉の徐波が認められた。脳脊髄液検査では18/28名で炎症性障害が明らかとなり、1名ではSARS-CoV-2が陽性となった。せん妄・神経学的症状は、人工呼吸期間の延長を引き起こした。
評価
同著者らによる最初期の報告(http://doi.org/10.1056/NEJMc2008597)を補完するもので、COVID-19患者において高率でせん妄・神経症状がみられることを確認した。死亡率への影響は有意でなかった。COVID-19による全身炎症反応や鎮静使用だけでなく、感染リスクを最小化するための制限もせん妄につながっている可能性がある(https://doi.org/10.1186/s13054-020-02882-x)。