高齢者虐待の受傷パターンは通常受傷とどう違うか:NY州訴訟記録の分析から
Identifying Injury Patterns Associated With Physical Elder Abuse: Analysis of Legally Adjudicated Cases

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
Annals of Emergency Medicine
年月
September 2020
76
開始ページ
266

背景

高齢者虐待の発見における救急部門の役割は重大だが、多くの場合、意図しない受傷と虐待による受傷を区別することは難しい。Weill Cornell MedicineのRosenらは、ニューヨーク州ブルックリンの検察当局の協力の下、高齢者虐待により加害者が有罪となった事件における被害者の受傷パターン(n=78)を、対照となる高齢救急患者の通常受傷と比較した。

結論

虐待の被害者では、意図しない受傷と比して打撲が多く(78% vs. 54%)、顎顔面・歯・頸部の受傷が多く(67% vs. 28%)、骨折(8% vs. 22%)や下肢の受傷(9% vs. 41%)は稀であった。また虐待被害者では、顎顔面・歯・頸部の受傷にもかかわらず上肢・下肢の外傷がないものが多かった(50% vs. 8%)。詳細な調査では虐待被害者の受傷は、左側の頬部・頬骨(22% vs. 3%)、左側頸部(15% vs. 0%)、左耳(6% vs. 0%)に多かった。

評価

訴訟記録を用いた調査により、高齢者虐待による受傷では、四肢外傷を伴わない頭頸部の受傷、さらに左側頭頸部の受傷が多いことを明らかにした。典型的なパターンを持つ患者ではより慎重なスクリーニングが必要となろう。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)