妊婦での肺塞栓除外戦略は本当に安全か:DiPEP研究の二次解析
Accuracy of PE rule-out strategies in pregnancy: secondary analysis of the DiPEP study prospective cohort
背景
妊婦は肺血栓塞栓症(PE)発症リスクが高くなり、PE疑い妊婦で臨床確率とD-dimer値を組み合わせてPEを除外する臨床意思決定ルールが提案されている。イギリスUniversity of SheffieldのGoodacreらは、11施設のPE疑い妊娠中・産後女性のデータと血液サンプルを前向に収集したDiPEP研究の二次解析として、臨床的事前確率(YEARSアルゴリズムまたはジュネーブ・スコア)とD-dimerによる除外戦略の精度を評価した(n=219)。
結論
12名(5.5%)がPEと診断された。YEARS/D-dimer戦略は43.8%の女性でPEを除外したが、このうち5名がPE診断を受けた。感度は58.3%、特異度は44.0%であった。ジュネーブ・スコア/D-dimer戦略は21%でPEを除外したが、3名のPEを含んだ。感度は75.0%、特異度は20.8%であった。
評価
YEARS/D-dimer戦略は大規模な検証により確立されてきたが(http://doi.org/10.7326/M18-1670、http://doi.org/10.1056/NEJMoa1813865)、本研究が示した見逃し率はこれらと比べてかなり高い。画像検査の出来ないPE疑い例で直ちに抗凝固療法を開始するイギリスのガイダンスが影響している可能性もあり、さらなる検証が求められる。