重症急性腎障害での早期透析開始は無益:RCT患者データのメタ解析
Delayed versus early initiation of renal replacement therapy for severe acute kidney injury: a systematic review and individual patient data meta-analysis of randomised clinical trials

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
The Lancet
年月
May 2020
395
開始ページ
1506

背景

重症急性腎障害(AKI)に対する腎代替療法(RRT)の開始タイミングについては、AKIKI試験、ELAIN試験、IDEAL-ICU試験などの臨床試験が行われてきたが、その結論は相矛盾している。フランスAP-HP Hopital AvicenneのGaudryらは、システマティックレビューにより重症AKI患者での早期RRT開始戦略を検証したランダム化比較試験を特定、これらの試験実施者から得られた患者個別データをメタアナリシスした。

結論

10件の研究、2,143名の患者が含まれた。うち患者個別データが利用可能であったのは9件、2,083名であった。28日死亡率は晩期RRT群44%、早期RRT群43%であり、晩期RRTによるリスクは見られなかった(リスク比1.01)。研究間の異質性はなく、多くの研究でバイアスリスクは低であった。

評価

早期RRTのベネフィットを示したAKIKI試験の研究者らが中心となって行われたメタ解析で、RRTの開始タイミングにより死亡率に差がないことを確認した。緊急適応がない患者で、ただちにRRTを開始する意義はないと考えてよいだろう。この問題の真打ちとして、本メタ解析の患者数を単独で上回る大規模試験STARRT-AKIが完了済みである(NCT02568722)。

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大規模臨床試験、新規の薬・機器・手法・因子・メカニズムの発見に関する文献を主に取り上げ、原文の要約と専属医師のコメントを掲載。

(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)