ARDSでの低すぎる酸素目標値は危険か:LOCO2試験
Liberal or Conservative Oxygen Therapy for Acute Respiratory Distress Syndrome
背景
過剰な酸素への曝露は多くの重症患者で有害と考えられるようになっており、急性呼吸促迫症候群(ARDS)でも同様の示唆がある。フランスUniversite de Franche ComteのBarrotらは、ARDS患者を、7日間の保守的酸素療法(PaO2:55~70 mmHg、SpO2:88~92%)またはリベラル酸素療法(PaO2:90~105 mmHg、SpO2:96%以上)に割り付ける多施設ランダム化比較試験を実施した。
結論
安全性と無益性の懸念により試験は中途中止となった(n=205)。28日死亡率は保守的酸素群34.3%、リベラル酸素群26.5%であった(非有意)。90日死亡率は44.4%、30.4%と保守的酸素群で高かった。保守的酸素群では、5件の腸管虚血イベントが発生した。
評価
直近ではICU-ROX試験が保守的酸素のベネフィットを示すことに失敗したが(http://doi.org/10.1056/NEJMoa1903297)、この試験ではかえって死亡率が悪化する傾向がみられた。SpO2で88~92%という低すぎる目標値により低酸素血症が生じた可能性があり、現時点では90%台半ばを目安として管理することが安全と思われる。