ARDSでの低すぎる酸素目標値は危険か:LOCO2試験
Liberal or Conservative Oxygen Therapy for Acute Respiratory Distress Syndrome

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
The New England Journal of Medicine
年月
March 2020
382
開始ページ
999

背景

過剰な酸素への曝露は多くの重症患者で有害と考えられるようになっており、急性呼吸促迫症候群(ARDS)でも同様の示唆がある。フランスUniversite de Franche ComteのBarrotらは、ARDS患者を、7日間の保守的酸素療法(PaO2:55~70 mmHg、SpO2:88~92%)またはリベラル酸素療法(PaO2:90~105 mmHg、SpO2:96%以上)に割り付ける多施設ランダム化比較試験を実施した。

結論

安全性と無益性の懸念により試験は中途中止となった(n=205)。28日死亡率は保守的酸素群34.3%、リベラル酸素群26.5%であった(非有意)。90日死亡率は44.4%、30.4%と保守的酸素群で高かった。保守的酸素群では、5件の腸管虚血イベントが発生した。

評価

直近ではICU-ROX試験が保守的酸素のベネフィットを示すことに失敗したが(http://doi.org/10.1056/NEJMoa1903297)、この試験ではかえって死亡率が悪化する傾向がみられた。SpO2で88~92%という低すぎる目標値により低酸素血症が生じた可能性があり、現時点では90%台半ばを目安として管理することが安全と思われる。

関連するメディカルオンライン文献

大規模臨床試験、新規の薬・機器・手法・因子・メカニズムの発見に関する文献を主に取り上げ、原文の要約と専属医師のコメントを掲載。

(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)