救急での身体拘束は患者にとってどのような経験なのか
Experiences of Individuals Who Were Physically Restrained in the Emergency Department
背景
救急患者では興奮・不穏を伴う行動障害により身体拘束を余儀なくされる場合があるが、拘束が患者の視点から研究されたことはほとんどない。Yale School of MedicineのWongらは、身体拘束が必要となった成人救急患者25名での定性的・半構造化インタビューを実施、患者が身体拘束エピソードをどのように経験するかを記述した。
結論
拘束からインタビューまでの期間は2週間未満から6ヵ月以上であった。88%は精神障害もしくは薬物使用に関連した拘束と報告、80%は救急受診を強制されたと感じていた。拘束経験に関する3つのテーマが特定された。1) 拘束具使用と救急ケア自体での、人間性・自己決定の喪失、混乱、不満、孤立などの否定的経験、2) 救急受診へと至った薬物・アルコールの影響、医療システムへの接続不全など多様な個人的背景、3) 拘束経験が引き起こした医療への不信、永続的な身体・精神的悪影響。
評価
医療者や患者自身の安全を確保するために避けがたい場面があるとはいえ、身体拘束が患者にとって大きな否定的経験であることも事実である。避けうる拘束を避けつつ、心理的影響を永続化させないためのアプローチが模索される必要がある。

