敗血症での1時間以内の抗菌薬投与は実現可能な目標なのか
Antibiotic Delays and Feasibility of a 1-Hour-From-Triage Antibiotic Requirement: Analysis of an Emergency Department Sepsis Quality Improvement Database
背景
敗血症性ショック患者では可能なかぎり早期の抗菌薬投与が重要と考えられており、2018年にはSurviving Sepsis Campaignがトリアージから1時間以内に抗菌薬投与を行うよう勧告した。Massachusetts General HospitalのFilbinらは、トリアージ1時間以内の抗菌薬投与の実現可能性を検証するため、品質改善介入の前後12ヵ月間における重症敗血症・敗血症性ショック救急患者での後向研究を行った。
結論
介入前期間から297名、品質改善介入期間から357名が含まれた。低灌流発症から3時間以上の抗菌薬遅延は、介入前で30%、介入中でも21%発生した。トリアージから1時間以上の抗菌薬遅延は介入前で85%、介入中にも71%にのぼった。抗菌薬投与の遅れと関連する因子として、非定型的所見、救急以外でのトリアージ、介入前期間、低いSOFAスコアが挙がった。
評価
品質改善イニシアチブにもかかわらず1時間以内の抗菌薬投与は30%に満たなかった。SSCの勧告(http://doi.org/10.1007/s00134-018-5085-0)については、1時間というカットオフを支持する確たるエビデンスがなく、過酷な時間制約による他の重要なケアの阻害や、不要な抗菌薬投与などのリスクが当初から問題視され、複数の学会が懸念を呈している。