重症外傷患者での予防的下大静脈フィルター留置はアウトカム改善せず
A Multicenter Trial of Vena Cava Filters in Severely Injured Patients
背景
抗凝固療法が禁忌となる重症外傷患者では、下大静脈フィルターによる肺血栓塞栓症予防が行われることがあるが、エビデンスは一貫していない。オーストラリアRoyal Perth HospitalのHoらは、Injury Severity Scoreが15を超える重症外傷患者に、72時間以内の下大静脈フィルター留置またフィルター留置なしを割り付ける多施設ランダム化比較試験を実施した(n=240)。
結論
一次エンドポイント(症候性肺塞栓症または死亡)発生率は、下大静脈フィルター留置群13.9%、対照群14.4%と差はなかった(ハザード比0.99)。7日以内に予防的抗凝固療法を受けなかったサブグループでは、フィルター留置群の0/46名、対照群の5/34名が肺塞栓症を発症した。フィルター留置群の6名で捕捉された血栓がみつかった。
評価
最新のメタ解析ではフィルター留置は全死亡率に影響しないと結論されいている(http://doi.org/10.1016/j.jacc.2017.07.775)。本RCTでも一次アウトカムに差はなく、コストやリスクを考慮すれば、抗凝固療法の禁忌が長期におよばない患者でフィルター挿入をする必要性は低いと考えられる。