J波症候群ERS・BrS患者を最大規模遺伝子解析
Distinct Features of Probands With Early Repolarization and Brugada Syndromes Carrying SCN5A Pathogenic Variants
背景
遺伝性J波症候群(JWS)は、早期再分極症候群(ERS)とブルガダ症候群(BrS)とに大別される。中国Renmin Hospital of Wuhan UniversityのZhangらは、SCN5Aの病原性バリアントを持つBrS患者262人・ERS患者104人を対象として、臨床評価・ゲノム解析・パッチクランプ法チャネル機能解析・計算モデルタンパク質構造解析を行った。
結論
ERSではSCN5A+の発現率がBrSに比し有意に低かった(9.62% vs 22.90%)。ERSではBrSに比し、QRS幅・QTcが短かった。5人の患者に2つ以上のSCN5A遺伝子変異がみられた。これらの患者は、PR間隔・QRS幅が長く、1バリアントのみ保有患者と比し、重症不整脈イベントが多かった。発熱誘導ERSの患者からSCN5A-L1412Fが初めて検出された。機能完全喪失変異であり、Nav1.5構造が不安定化してドミナントネガティブ効果を示し、発熱時にはその効果が顕著になった。ERS関連のSCN5A-G452Cは、SCN5A単独発現の場合にはINaを変化させなかったが、KCND3と共発現した場合にはピークINaを44.52%減少させ、一過性外向カリウム電流(Ito)を106.81%増加させた。
評価
JWSの2型に関する最大規模研究の一つで、SCN5A変異との関連の多様性が示して同疾患の統合的理解の端緒となった。発熱誘発ERS患者での同変異の同定は初めてである。