RCTへの本格的AIメタアナリシスが出現:HFrEFへのβブロッカーの効果
Redefining β-blocker response in heart failure patients with sinus rhythm and atrial fibrillation: a machine learning cluster analysis
背景
AIによる臨床試験の本格的メタアナリシスが現れた。イギリス University of BirminghamのKotechaらによるもので、洞調律/心房細動(AF)合併のHFrEF患者に対するβ遮断薬の効果を検証した9RCT(n=15,659) の個別患者データに対し、ニューラルネットワークベースvariational autoencoder(VAE)と階層クラスター分析を行ったものである。
結論
洞調律で6、AFで5クラスターが分離された。洞調律HFrEF患者の大部分のクラスターにおけるβ遮断薬群の全死因死亡ORは0.54-0.74であったが、非重症・高齢・低心拍数のクラスターでは有意差はみられなかった。AF合併HFrEF患者クラスターの4/5ではβ遮断薬による全死因死亡の有意な減少はみられなかったが、死亡リスクが低く平均程度のLVEFを有する若年患者クラスターで全死因死亡の減少がみられた(OR: 0.57)。洞調律・AF合併患者クラスターともに、堅牢度は高く、交差検証で汎化性を認めた。
評価
メタアナリシスへのAI応用は散見されるが、これは最初の本格例とみられる。ESC発表では、著者らが長期データや画像データの組み込み等、大きな展開可能性を強調する一方、フロアからはブラックボックス性への懸念等も表明されたという。臨床試験・メタアナリシスという医学方法論のパラダイム転換を予期させる論文である。