軽症脳梗塞での血栓溶解療法は無益:メタ解析
Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials on IV Thrombolysis in Patients With Minor Acute Ischemic Stroke
背景
静注血栓溶解療法(IVT)は、急性虚血性脳卒中の治療において重要な役割を有するが、NIH Stroke Scaleが5以下の軽症例では効果が不明確かつ出血リスクもあることから、その意義が議論の的であった。
アメリカUniversity of Pittsburgh School of MedicineのDoheimらは、NIHSSスコアが5以下の軽症脳卒中に対するIVTを評価したRCTを特定し、良好な機能的回復(90日時点の修正Rankin Scaleが0-1)および機能的自立(0-2)、安全性エンドポイントを比較する系統レビュー・メタアナリシスを実施した。
結論
軽症脳卒中のみを対象とした4件のRCTが主要解析に含まれた(n=3,364)。
IVTは、良好な機能的回復と有意に関連しなかった(オッズ比 0.85)。
さらにIVTは機能的自立のオッズ低下(0.71)、症候性頭蓋内出血の増加(5.22)、90日死亡の増加(2.40)と関連した。一方でサブグループ解析においては、機能障害を伴う(with disabling)グループ、伴わない(nondisabling)グループとも、IVTと良好な機能的回復との非有意な関連が示された。
評価
最近ではARAMIS試験、TEMPO-2試験が相次いで軽症例でのIVTに疑義を示し、海外のガイドラインも非推奨としており、このメタアナリシスもその方向性を追認する結果である。
ただ、著者らが注意するように、NIHSSで軽症だがdisablingな症例についてはデータが少なく、さらなる検討が必要かもしれない。


