雪崩による埋没でも35分間呼吸が可能な新規デバイスが登場
Respiratory Gas Shifts to Delay Asphyxiation in Critical Avalanche Burial: A Randomized Clinical Trial

カテゴリー
救急医療、Top Journal
ジャーナル名
The Journal of the American Medical Association
年月
October 2025
334
開始ページ
1720

背景

ヨーロッパでは雪崩による死者が、アクティビティ(バックカントリースキーなど)中の事故を中心に、年間100人前後発生している。雪崩による死因の多くは雪中への埋没による窒息であり、埋もれた被害者を素早く発見するためのビーコン(アバランチ・トランシーバー)や、完全埋没を回避するためのアバランチ・エアバッグなどが開発されてきた。
イタリアEurac ResearchのEisendleらは、バックパックに装着可能な新たな送気デバイス(Safeback SBX)の有効性を検証するため、18〜60歳の健康被験者36名を、試験デバイスまたはshamデバイスを装着した状態で50 cm以上の雪の下にうつ伏せで埋没させ、連続的モニタリングを行い低酸素血症(SpO2 <80%)の発症を比較するRCTを実施した。

結論

24名が試験を完了し、最終解析に含まれた。参加者の年齢は中央値27歳、54%が男性であった。
試験デバイス群では、35分間のモニタリング中に酸素飽和度低下イベントは発生せず、埋没時間の中央値は35分となった一方、対照群の埋没時間は中央値6.4分で、7件のイベントが発生した。
堆積した雪中のエアポケットの二酸化炭素濃度は、試験デバイス群で1.3%、対照群で6.1%であり、酸素濃度はそれぞれ19.8%、12.4%であった。

評価

雪崩によって堆積した雪は多くの空気を含んでいる。このデバイスはそれを背中側から吸気し被害者の口元に送ることで、窒息を最大90分遅らせられるものである(https://www.youtube.com/watch?v=FcDALHmHWAQ)。
本試験では、デバイスによって酸素/二酸化炭素濃度は安全域に維持され、35分間の埋没でも低酸素血症の発症に至らないことを実証した。日本雪崩ネットワークによれば、日本でも年間10人前後が雪崩によって死亡しており、こうしたセーフティ・デバイスの普及は必須だろう。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)