ICU人工呼吸器装着患者での選択的消化管除菌(SDD)は死亡率を低下させない:SuDDICU試験
Selective Decontamination of the Digestive Tract during Ventilation in the ICU
背景
選択的消化管除菌(selective digestive decontaminationまたはselective decontamination of the digestive tract; SDD)は、経口・胃内への抗菌薬投与などによって院内感染の原因となるグラム陰性桿菌や真菌の抑制を目指す手法で、40年以上の歴史を持つが、一般的な耐性菌発生への懸念に加えて、耐性菌の少ないオランダ・北欧とそれ以外とで有効性の報告に差があることもあって、国際的に採用は広がっていない。
SuDDICU試験は、オーストラリア・カナダの集中治療室で人工呼吸器管理を受ける患者に、人工呼吸器装着期間中のSDD、または標準ケア継続を割り付け、90日全原因院内死亡率などを比較するクロスオーバー型クラスターランダム化試験であり、2022年にはオーストラリアからの結果が報告されたが、死亡率に差は認められなかった(https://doi.org/10.1001/jama.2022.17927)。
アメリカSunnybrook Health Sciences CentreのCuthbertsonらは、カナダの結果も合わせた同試験の統合結果(n=9289)、さらにランダム化されなかった患者を含む微生物生態学的解析の結果を報告した(n=10,711)。
結論
90日院内死亡率はSDD群で27.9%、標準ケア群で29.5%と、有意な差は認められなかった(オッズ比 0.93)。
新規の血流感染症は、SDD群の4.9%、標準ケア群の6.8%で発生し、抗菌薬耐性菌は各群16.8%、26.8%で培養された。
生態学的評価では、新規耐性菌の出現に関するSDDの非劣性は認められなかった。
評価
SDDは院内死亡を有意に減少させず、また、患者個人レベルでは感染症・耐性菌発生を減らしたものの、ICUレベルでは耐性菌発生リスクの非劣性は示されなかった。
2022年のSuDDICU結果と同時に発表されたベイズ解析(https://doi.org/10.1001/jama.2022.19709)は、SDDが死亡率を改善する可能性がかなり高い(99.3%)としていたが、今回の結果をみてもその効果量はごく小さいと考えられる。条件の良い地域・施設では検討されるかもしれないが、グローバルな標準と位置付けるのは難しい。


