ショックを呈する重症患者の血圧モニタリングにAラインは不要か:EVERDAC試験
Deferring Arterial Catheterization in Critically Ill Patients with Shock
背景
ショック状態の患者では、正確かつ連続的な血圧測定が可能な動脈カテーテルの留置(動脈ライン, Aライン)が推奨されている。動脈ラインには採血が容易であるというメリットもあるが、動脈ラインによる血圧モニタリングが、普通のカフ・オシロメトリック法によるモニタリングより優れているかは検証されたことがない。
フランスCentre Hospitalier Universitaire d'OrléansのMullerら(EVERDAC)は、ショックを呈し、集中治療室に入室して24時間以内の患者を、ランダム化後4時間以内の動脈カテーテル挿入(侵襲的戦略群)、または上腕カフによるモニタリング(非侵襲的戦略群, ただし事前基準を満たした場合は動脈カテーテル挿入)へと割り付け、28日全原因死亡率を比較する非劣性RCTを実施した(n=1,010)。
結論
動脈カテーテルの挿入は、侵襲的戦略群の98.2%、非侵襲的戦略群の14.7%で実施された。
28日死亡率は侵襲的戦略群で36.9%、非侵襲的戦略群で34.3%であり、非侵襲的戦略の非劣性が示された。per-protocol解析の結果も同様であった。
侵襲的戦略群では9.0%、非侵襲的戦略群では13.1%が、モニタリングデバイスの装着に関連した疼痛・不快感を経験した。また、動脈カテーテル関連の血腫・出血は、侵襲的戦略群の8.2%、非侵襲的戦略群の1.0%で発生した。
評価
ICUショック患者における上腕カフ式血圧測定は、標準的なAラインによるモニタリングと比して、非劣性であった。
血行動態モニタリングのメリットが小さいとなると、穿刺・留置による合併症のリスクが前景化するため、動脈カテーテルはルーチンではなく、条件付きの選択肢となっていく可能性がある。


