中等度以上のAKIを呈する代謝性アシドーシス患者でも炭酸水素ナトリウムは無益:BICARICU-2試験
Sodium Bicarbonate for Severe Metabolic Acidemia and Acute Kidney Injury: The BICARICU-2 Randomized Clinical Trial
背景
2018年に発表されたBICAR-ICU試験(BICARICU-1)は、代謝性アシドーシスに対して慣行的に用いられてきた炭酸水素ナトリウムが全原因死亡と臓器不全を減らさないことを明らかにした。ただし、同試験の層別解析では、中等度・重度の急性腎障害(AKI)患者において炭酸水素ナトリウムが有益である可能性も示唆されていた。
フランスMontpellier UniversityのJungら(BICARICU-2)は、同国43の集中治療室で、重症の代謝性アシデミア(pH ≦7.20)と中等度・重度のAKIを呈する成人患者に対し、動脈血pH 7.30を目標とする炭酸水素ナトリウム静注、または炭酸水素ナトリウムなしを割り付け、90日全原因死亡率を比較するRCTを実施した(n=640)。
結論
90日死亡率は、炭酸水素ナトリウム群で62.1%、対照群で61.7%と差がなかった。28日・180日死亡率についても治療群による影響は認められなかった。
18の二次アウトカムのうち、腎代替療法についてのみ炭酸水素ナトリウム群での減少が認められた(35% vs. 50%)。
評価
BICARICU-1試験のサブグループ結果に基づいて、中等度・重度のAKIを呈する患者に絞って行われた研究であったが(付随論説には「周縁的なサブグループ知見を検出力の低い研究で追いかける」ことへの批判的な一文もある)、炭酸水素ナトリウムの効果は認められなかった。
ただ、オープンラベル・デザインのためバイアスリスクはあるものの、腎代替療法の回避・延期効果も示唆されたことから、今後も、炭酸水素ナトリウムの使用が合理的な場面は残るだろう。


