高リスクな大血管・一般外科手術後患者の輸血戦略も制限的でよい:TOP試験
Liberal or Restrictive Postoperative Transfusion in Patients at High Cardiac Risk: The TOP Randomized Clinical Trial
背景
赤血球輸血のトリガー値に関しては多くのランダム化試験が行われており、ほとんどの入院患者集団について、ヘモグロビン値7 g/dL未満の制限輸血でよいことが示されている。非心臓手術後の高リスク患者の輸血戦略については、不確実性が残されていた。
アメリカDownstate Health Sciences UniversityのKougiasら(TOP)は、全米16ヵ所の退役軍人病院において、心イベントリスクが高く、大血管手術・一般外科手術を受け、術後にヘモグロビン値が10 g/dL未満となった退役軍人患者を、10 g/dL未満を輸血トリガーとするリベラル輸血戦略、または7 g/dLとする制限輸血戦略へと割り付け、90日複合アウトカム率を比較するRCTを実施した(n=1,424)。
一次エンドポイントはランダム化後90日以内の全原因死亡、心筋梗塞、冠動脈血行再建術、急性腎不全、虚血性脳卒中の複合とした。
結論
91.1%は血管手術を受けた患者であった。ランダム化後5日目の時点における、群間のヘモグロビン値の差は平均2.0 g/dLであった。
一次エンドポイント率は、リベラル輸血群で9.1%、制限輸血群で10.1%であった(相対リスク 0.90)。また、心筋梗塞以外の心血管合併症(不整脈、心不全、非致死性心停止)の発生率は、リベラル輸血群で5.9%、制限輸血群で9.9%と、リベラル輸血群で低下した(相対リスク 0.59)。
評価
心血管リスクが高い血管手術後の集団においても、制限的輸血はリベラル輸血と差がなかった。
ただし、5つの二次アウトカムのうち、MI以外の心合併症についてはリベラル輸血が優るという新しいニュアンスが加えられており、一律7 g/dLの妥当性には今後も議論が残るだろう。


