口腔内細菌叢が膵がんのリスクと関連する
Oral Bacterial and Fungal Microbiome and Subsequent Risk for Pancreatic Cancer
背景
口腔内の微生物叢とがんとの関連は、近年集中的な研究の対象となっている。膵がんについても口腔微生物叢との関連が示唆されているが、16S rRNA解析や小規模な後向コホートでのエビデンスが中心である。
アメリカNYU Grossman School of MedicineのMengらは、2つの疫学コホート(CPS-IIとPLCO)のいずれかに参加し、唾液サンプルを提供した参加者のうち、追跡期間中に膵がんを発症した可能性のある参加者を特定してがん未発症の対照者とマッチングし、口腔内の細菌・真菌叢が膵がん発症と関連しているかを検証した。
結論
中央値8.8年の追跡期間中、サンプルを提供した参加者122,000名のうち、445名が膵がんを発症し、同数の対照者とマッチングされた。
3種の歯周病原性細菌(Porphyromonas gingivalis、Eubacterium nodatum、Parvimonas micra)が膵がんリスクの増加と関連していた。全細菌叢スキャンでは、8種の口腔細菌が膵がんリスクの低下と、13種の細菌がリスクの増加と関連した。真菌では、Candida属が膵がんリスクの増加と関連した。
また、27種の口腔微生物に基づく微生物リスクスコア(MRS)が1標準偏差上昇するごとに、多変量オッズ比3.44で膵がんリスクが上昇した。
評価
大規模前向コホートでのメタゲノム調査で、口腔細菌・真菌叢が膵がんの発症と関連することを明確化した。
膵がんの予防戦略や、高リスク集団の絞り込みにもヒントを与える知見である。

