スローテンポな音楽はICU人工呼吸患者のせん妄・不安を低減しない:DDM試験
Slow-Tempo Music and Delirium/Coma-Free Days Among Older Adults Undergoing Mechanical Ventilation: A Randomized Clinical Trial

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
JAMA Internal Medicine
年月
October 2025
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開始ページ
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背景

集中治療室(ICU)では電子機器・モニターのアラームなどによって、病棟で推奨される音量レベルが恒常的に逸脱されており、せん妄の発症と関連するとの示唆がある。2013年の試験では、人工呼吸器装着患者における患者選択の音楽療法により、不安と鎮静頻度が低減されることを示している(https://doi.org/10.1001/jama.2013.5670)。
アメリカIndiana University School of MedicineのKhanら(DDM)は、同大学病院およびMayo Clinicで人工呼吸器装着を受ける高齢患者を対象に、ノイズキャンセリング・ヘッドホンに加えて、朝夕2回1時間、iPadによりスローテンポ(60〜80 bpm)の音楽鑑賞セッションを行う実験群、ノイズキャンセリング・ヘッドフォンのみ(無音のトラックを再生)の対照群へと割り付けを行い、せん妄・昏睡のない日数を比較するRCTを実施した(n=158)。

結論

患者の平均年齢は68歳であった。
ITT解析では、せん妄・昏睡のない日数(中央値)は実験群で2.5日、対照群で3.0日と有意差は認められなかった。
7日間の期間中、せん妄の重症度(CAM-ICU-7)や疼痛スコア(Critical Care Pain Observation Tool)、不安(VAS-A)の平均値に有意差は認められず、試験終了時のスコアも両群同等であった。

評価

人工呼吸器装着患者でのスローテンポ音楽療法は、せん妄や不安のレベルに有意な差をもたらさなかった。
この試験ではアクティブ・コンパレーターとしてノイキャン・ヘッドフォンが用いられており、それによる騒音遮断自体が効果の本体であった可能性がある。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)