低リスク前立腺がんでの全摘は過去20年で1/5に
Trends in Surgical Overtreatment of Prostate Cancer
背景
前立腺がんの診療では近年、診断技術が高度化し、監視療法(active surveillance)の選択も広がったことで、低リスク例での過剰治療が減少していると考えられている。
アメリカUniversity of MichiganのMondaらは、2010年以降に前立腺切除術を受けた患者を対象として後向コホート研究を実施し、臨床病期と(過剰治療の代替指標としての)前立腺全摘除術との関連を調査した。
対象となったコホートは全米規模のがんレジストリであるSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER, n=162,558)、およびミシガン州の臨床レジストリであるMichigan Urological Surgery Improvement Collaborative(MUSIC, n=23,370)であった。
結論
最終病理レポートで病理学的グレードグループ1(pGG 1)であり、前立腺全摘除術を受けた患者の割合は、SEERレジストリでは2010年の32.4%から、2024年には7.8%へ、MUSICレジストリでは2012年の20.7%から、2024年には2.7%へと低下した。各レジストリの5年あたりのオッズ比は、それぞれ0.41、0.39であった。
pGG 1のサブセットでは、近年の前立腺全摘除術は、コアの50%超で陽性、PSAが10 ng/mL以上、以前の生検でGG 2など、術前に高リスク特徴がみられた患者で実施される傾向が強かった。
評価
アメリカの2つの大規模レジストリのデータから、過去20年間、pGG 1例での前立腺全摘の実施が顕著に減少していることを確認した。
過剰治療の存在はユニバーサルな前立腺がん検診の大きなネックであったが、前立腺全摘が実際に減少していたというデータは、ベネフィット/ハームの議論にも影響を与えるだろう。