ACSに対するCABG後、チカグレロルDAPTはアスピリン単独に優越せず:TACSI試験
Ticagrelor and Aspirin or Aspirin Alone after Coronary Surgery for Acute Coronary Syndrome
背景
急性冠症候群(ACS)に対する冠動脈バイパス移植術(CABG)後の抗血小板療法において、アスピリン単独に対するチカグレロル追加の有効性は不明確であった。
スウェーデンSahlgrenska UniversityのJeppssonら(TACSI)は、北欧22施設において2,201名の患者を対象に、この問題を検討するRCTを実施した。
一次エンドポイントは、1年後の死亡・心筋梗塞・脳卒中・再血行再建術の複合であった。
結論
チカグレロルとアスピリンの併用は、アスピリン単独より一次エンドポイントイベントの発生率を低下させなかった(4.8% vs. 4.6% )。純臨床有害事象(NACE)の発生は、9.1% vs. 6.4%(HR 1.45)であった。大出血の発生は、4.9% vs. 2.0%であった(2.50)。
評価
現在、米欧のガイドラインでは、ACSに対するCABG後の患者にはDAPTが推奨されているが、この推奨は主にCABGを受けていない集団からのデータ外挿や、小規模RCTに基づいており、エビデンスは限定的であった。このTACSI結果は、心血管イベントの改善がなく、大出血リスクが増加したとして、ガイドラインに疑問を呈した。しかし他方、TACSI結果は、DAPTが静脈グラフト開存性を改善したとするDACAB結果(https://doi.org/10.1136/bmj-2023-075707)と一致していない。TACSIのDAPT群におけるアドヒアランスの低さが有効性結果に影響を与えた可能性もあり、問題は論争的となった。