代謝性アシドーシスに対する炭酸水素ナトリウム、仮想的RCTの結果は「効果あり」
Sodium bicarbonate administration for metabolic acidosis in the intensive care unit: a target trial emulation

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
Intensive Care Medicine
年月
June 2025
51
開始ページ
1078

背景

炭酸水素ナトリウムは代謝性アシドーシスの治療に使用される場合があるが、そのベネフィットは明確ではない。ランダム化比較試験であるBICAR-ICU試験は有意な結果を示しておらず(https://doi.org/10.1016/S0140-6736(18)31080-8)、観察研究の結果はまちまちである。
オーストラリアCairns HospitalのBlankらは、同国12ヵ所の集中治療室のデータを用いた後向コホート研究を実施し、入院後3日以内にpH < 7.3かつPCO2 ≦ 45 mmHgの適格基準を満たした成人患者において、基準を満たした当日の炭酸水素ナトリウム投与と30日ICU死亡率との関連をエミュレートした。

結論

対象となるICU入室は6,157件であり、うち1,764件(29%)が炭酸水素ナトリウムの投与を受けていた。
炭酸水素ナトリウム投与は、死亡率の1.9%の絶対低下と関連しており(リスク比 0.86)、評価が行われた全てのサブグループで有意なベネフィットが認められた。
感度分析でも同様の点推定、2.1%が得られ、30日時点で持続的な死亡率低下が認められた。

評価

ここ数年流行する、観察データによってRCTを模倣するTarget trial emulationフレームワークを用いた検証である。炭酸水素ナトリウムがICUの代謝性アシドーシスにおいて死亡率をわずかに低下させることを示唆した。
この知見をRCTで再現するには大きなサンプルサイズが必要であり実現するかは不透明だが、より良いエビデンスが現れるまで炭酸水素ナトリウム投与は合理的な介入とみなされるだろう。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)