人工呼吸器装着患者でのせん妄予防、低用量メラトニンは無益:DEMEL試験
Melatonin for prevention of delirium in patients receiving mechanical ventilation in the intensive care unit: a multiarm multistage adaptive randomized controlled clinical trial (DEMEL)
背景
集中治療室(ICU)に入室した重症患者では、睡眠障害とサーカディアンリズムの混乱がしばしば生じ、せん妄の発症リスクと関連する。これまでせん妄の発症予防を目指して、メラトニンやラメルテオンの投与が検証されてきたが、その効果は微妙であった。
フランスUniversité Paris Est CréteilのMekontso Dessapら(DEMEL)は、薬物動態的に最適なメラトニンの投与量を決定するため、同国20施設で人工呼吸器による管理を受けるICU患者を対象に、プラセボ、低用量メラトニン(0.3 mg)、高用量メラトニン(3 mg)を割り付ける第2b/3相RCTを実施した(n=355)。
結論
中間解析(n=75)において、中間一次アウトカムである最適な薬物動態プロファイル(ピーク時に1,000 pg/mLを超え、翌朝8時に100 pg/mL未満に低下すること)を達成した患者の割合は、低用量メラトニン群50%、高用量メラトニン群24%、プラセボ群0%となり、その後は低用量メラトニン群とプラセボ群に割り付けが行われた。
有効性に関する一次エンドポイントであるせん妄発症率は、低用量メラトニン群54.4%、プラセボ群55.2%と差がなかった(リスク比 0.986)。その他の重要な二次アウトカムについても同様であった。
評価
これまで検証されてきた高用量メラトニンは持続的な血中濃度上昇による「二日酔い」を引き起こし、サーカディアンリズムのリセットを妨げているのではないか、という仮説に基づく試験デザインであったが、低用量メラトニンでもせん妄予防の効果は認められなかった。
ICUでのせん妄発症は複合的な原因を持つと考えられ、予防にも多面的介入が必要とされるだろう。


