頭部外傷は脳腫瘍のリスクを高めるか
Traumatic Brain Injury and Risk of Malignant Brain Tumors in Civilian Populations
背景
脳腫瘍のリスク因子としては、電離放射線曝露との関連が確立されているが、外傷性脳損傷(TBI)はどうか? 2024年には両者の関連を示す研究が発表されたものの、イラク戦争・アフガニスタン戦争の退役軍人という特異なコホートであり、エビデンスとしての制限があった(https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2023.54588)。
アメリカBrigham and Women's HospitalのMariniらは、同施設の患者データレジストリを基に、2000年から2024年年頭までに軽症・中等症・重症TBIを呈した成人患者、および年齢・性別をマッチングさせたTBI既往のない対照患者において、悪性脳腫瘍リスクとの関連を評価した(n=151,358)。
結論
TBIを発症した75,679名のうち、60,735名は軽症TBI、14,944名は中等症/重症TBIであった。
悪性脳腫瘍の有病率は、対照グループで0.4%、軽症TBIグループで0.4%(ハザード比 0.99)、中等症/重症TBIグループで0.6%(ハザード比 1.67)であった。
この結果は、アメリカの他の外傷センターのデータを含めたメタアナリシスにおいても同様であった。
評価
アメリカの民間人データから、頭部外傷と脳腫瘍発症との関連を示唆した。
本研究は画像検査による放射線被曝量について調整しておらず、また、過去にはスウェーデン(https://doi.org/10.1023/A:1011227617256)やデンマーク(https://doi.org/10.1093/neuonc/nou312)から関連を否定するデータもあり、結論には更なるデータの収集が必要だろう。