PI3K経路に変異を有する大腸がんではアスピリンが再発を予防する:ALASCCA試験
Low-Dose Aspirin for PI3K-Altered Localized Colorectal Cancer
背景
アスピリンは多くの観察研究・ランダム化比較試験のデータから、大腸がんへの予防的・治療的効果が示唆されてきた。さらに大腸がん患者でしばしば認められるPI3K経路遺伝子の変異が、この効果に影響することも明らかにされている。
スウェーデンKarolinska InstitutetのMartlingら(ALASCCA)は、PI3K経路の体細胞変異を有するI-III期の直腸がん、II-III期の結腸がん患者を対象に、1日1回3年間のアスピリン(160 mg)またはプラセボを投与し、PIK3CA遺伝子にホットスポット変異を有する集団(グループA)での大腸がん再発率を比較する第3相RCTを実施した。
結論
完全なゲノムデータを有する2,980名のうち、37.0%にあたる1,103名がPI3K経路遺伝子の変異を有した。このうち515名がPIK3CA遺伝子のホットスポット変異を有し、588名が他のPIK3CA・PIK3R1・PTEN体細胞変異を有した。
3年累積再発率は、グループAのアスピリン群で7.7%、プラセボ群で14.1%(ハザード比 0.49)、グループBのアスピリン群で7.7%、プラセボ群で16.8%(ハザード比 0.42)であった。3年無病生存率は、グループAのアスピリン群で88.5%、プラセボ群で81.4%(ハザード比 0.61)、グループBのアスピリン群で89.1%、プラセボ群で78.7%(ハザード比 0.51)であった。
重篤有害事象はアスピリン群の16.8%、プラセボ群の11.6%に発生した。
評価
PI3K経路に変異を有する大腸がん患者において、アスピリンが再発率を有意に低下させることを明らかにした。
COX-2選択的阻害薬セレコキシブを検証したCALGB/SWOG 80702試験でも、PIK3CA変異患者での有効性が認められており(https://doi.org/10.1200/JCO.23.01680)、PIK3CA変異のある大腸がんではCOX阻害がスタンダード化していくとみられる。