消化管出血疑い患者での救急CT血管造影は過剰か?
Computed Tomographic Angiography and Yield for Gastrointestinal Bleeding in the Emergency Department
背景
American College of GastroenterologyとSociety of Abdominal Radiologyは、血行動態が不安定な患者、および血行動態安定だが活動性の消化管出血(active GIB)の疑いが高い患者に対してコンピュータ断層血管造影(CTA)の実施を推奨している。一方、アメリカの救急外来では近年、CTA件数が大きく増加しており、急性GIBに対する過剰なCTA利用の懸念が存在した。
アメリカMass General BrighamのPrasadらは、2017年から2023年にMassachusetts General Hospitalの救急外来を受診し、GIB疑いにより腹部・骨盤部CTAを受けた全ての成人患者(n=954)を対象とした後向コホート研究を行い、救急外来のCT件数に対するGIB関連CTAの割合、およびCTAの陽性率を評価した。
結論
GIB関連CTAの件数は、2017年に救急外来で実施された全CT検査の0.09%(30/32,197件)であったのに対し、2023年には0.65%(288/44,423件)に増加した。
一方で、同じ期間にGIB関連CTAの陽性率は、20.0%(6/30)から6.3%(18/288)に低下した。
多変量解析では、毎年オッズ比0.84で検査陽性の確率は低下していた。また、年齢が高いほど陽性のオッズ比が高く(1.02)、担がん患者ではオッズ比が低下した(0.35)。
評価
都市部の単施設救急の後向データから、近年、GIBが疑われる患者におけるCTA実施率が急増しており、検査実施例で実際にGIBを認める確率は低下していることを明らかにした。
過剰なCTA実施を示唆する結果であり、GIB疑い例での適正なCTAに関するエビデンスの構築が望まれる。


