フードデリバリーを利用して心停止現場にAEDを送達する
Enhancing the Community Chain of Survival: A Simulation Study of Defibrillator Delivery by Food Delivery Riders in a High-Density City
背景
院外心停止(OHCA)における自動体外式除細動器(AED)の使用率は改善しているものの、心停止の大半は公共AEDの設置場所から離れた場所で起こることから、心停止現場への迅速なAED送達は依然として大きなテーマである。
台湾Taipei HospitalのChinらは、スクーターによるフードデリバリーが盛んな台北市において、フードデリバリーを活用したファーストレスポンダーAED送達が可能であるか検証するべくシミュレーション研究を行った。
シミュレーションでは、まず2017〜2019年のOHCA事例が収集された。さらにUber Eatsプラットフォームにおいてデリバリーのホットスポットを特定し、ホットスポット内の営業中飲食店に1人のライダーが待機していると仮定して、半径2 km以内のOHCAに対するライダーの対応が、AED到着までの実測時間の短縮につながるか分析した。
結論
デリバリーライダーがOHCAの10%に対応した場合、OHCA例の60%以上が対応されたことになり、AEDの到着は2.99分短縮された。これは44%のケースで、実際に救急隊員が到着したよりも早くAEDが送達可能であることを示している。
午前10時から午後10時のピークタイムに、OHCA例の80%が対応されるためには、ライダーの対応率は13.4%が必要であった(オフピークタイムでは40%以上が必要)。
評価
AEDの送達を迅速化する試みとしては、スマホ通知を使いボランティア市民を派遣するシステムが既に実装されているが(https://doi.org/10.1001/jamacardio.2022.4362)、この研究はUber Eatsのドライバーを派遣することでAED到着時刻を大幅に早められることを示した。あくまでシミュレーション研究ではあるが、有望なコンセプトである。
この他、人口密度の高い都市部以外ではドローンを用いる方法も提案されている(https://doi.org/10.1016/S2589-7500(23)00161-9)。