駆出率保持心筋梗塞患者に対するβ遮断薬の使用推奨は見直しを:REBOOT-CNIC試験
Beta-Blockers after Myocardial Infarction without Reduced Ejection Fraction
背景
心筋梗塞(MI)後のβ遮断薬の使用に関する現在の診療ガイドラインは、最新の治療モードを反映していない。特に、左室駆出率(LVEF)低下患者(≦40%)に対するβ遮断薬の有効性が現代の臨床試験で確認されている一方、LVEF>40%の患者に対するその有効性は明確でない。
スペインCentro Nacional de Investigaciones CardiovascularesのIbanezら(REBOOT-CNIC)は、急性心筋梗塞で入院治療を受け退院した、LVEF>40%の患者8,438名を対象に、β遮断薬療法の有効性をβ遮断薬非投与群と比較するオープンラベルRCTを実施した。一次エンドポイントは、全死因死亡・再梗塞・心不全入院の複合であった。
結論
中央値3.7年の追跡期間で、β遮断薬投与の一次エンドポイント効果を認めなかった。有害事象に群間差を認めなかった。
評価
Lancet掲載の追跡分析では、LVEF中等度低下患者の場合には、β遮断薬による保護効果が得られた(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(25)01592-2/abstract)。しかし、European Heart Journal掲載の個別患者データメタアナリシスでは、β遮断薬投与女性は、非投与女性に比べて死亡の絶対リスクが約3%高く(https://academic.oup.com/eurheartj/advance-article/doi/10.1093/eurheartj/ehaf673/8243876)、個別化アプローチが課題となる。他方、NEJM2024掲載のLVEF>50%以上患者を対象としたREDUCE-AMIでも、β遮断薬の有益性を示すエビデンスは示されておらず(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2401479)、本研究の結果と一致している。ガイドラインは、駆出率保持心筋梗塞患者に対するβ遮断薬の使用推奨を全般的に見直す方向へ進むとみられる。