救急・ICU挿管での前酸素化はNPPV:ネットワークメタ解析
Preoxygenation strategies for intubation of patients who are critically ill: a systematic review and network meta-analysis of randomised trials

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
The Lancet Respiratory Medicine
年月
July 2025
13
開始ページ
585

背景

救急や集中治療室(ICU)での気管挿管は低酸素血症リスクが高く、前酸素化(preoxygenation)が重要である。従来はフェイスマスクを用いた前酸素化が一般的であったが、近年、非侵襲的換気(NIV, N[I]PPV)や高流量鼻カニューラ(HFNC)といった代替戦略が有効性を示唆している。
カナダUniversity of TorontoのPitreらは、ICUまたは救急科での重篤成人患者への挿管においてHFNC・NPPV・フェイスマスクのいずれかを比較し、2024年10月までに発表されたランダム化比較試験を検索し、挿管中の低酸素血症、初回挿管成功率、重篤有害事象、全原因死亡率について評価するシステマティックレビュー・ネットワークメタアナリシスを実施した。

結論

合計3,420名の患者を登録した、15件の試験がネットワークメタアナリシスに組み込まれた。
前酸素化におけるNIPPVの使用は、HFNC(相対リスク 0.73, 中程度の確実性)、フェイスマスク(相対リスク 0.51, 高い確実性)と比して、挿管中の低酸素血症の発生率を低下させると考えられた。またHFNCも、フェイスマスクと比して挿管中の低酸素血症の発生率を低下させると考えられた(相対リスク 0.69, 高い確実性)。
いずれの戦略も初回挿管成功率には影響を与えず(低い確実性)、また全原因死亡率にも影響を与えないと考えられた(非常に低い~中程度の確実性)。
NIPPVは、フェイスマスクと比して重篤有害事象のリスクを低減する可能性が高く(相対リスク 0.30, 中程度の確実性)、HFNCと比して重篤有害事象のリスクを低減する可能性があった(相対リスク 0.32, 低い確実性)。

評価

昨年発表されたPREOXI試験はNIPPVの優位性を強く印象づけたがhttps://doi.org/10.1056/NEJMoa2313680)、このネットワークメタ解析もそれを確認した。
ガイドライン変更への根拠を与え、NIPPV・HFNCへの転換を促すエビデンスとなる。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)