カリウムレベルを上げて心室性不整脈リスクを軽減する:POTCAST試験
Increasing the Potassium Level in Patients at High Risk for Ventricular Arrhythmias
背景
血漿カリウム低濃度は心室性不整脈リスクを高めるが、血漿カリウムレベルを積極的に正常範囲上限に引き上げる治療戦略の有効性と安全性は。
デンマークHeart CenterのBundgaardら(POTCAST)は、心室性不整脈高リスクで、ベースライン血漿カリウム値が4.3mmol/L以下の植込み型除細動器(ICD)装着患者1,200名を、血漿カリウム値を正常高値(4.5〜5.0mmol/L)まで上昇させることを目標とする治療レジメン(正常高値カリウム群)と、標準治療群に割り付けるRCTを行った。
一次エンドポイントは、初回イベント発生までの持続性心室頻拍またはICD療法、不整脈または心不全による予定外入院、全原因死亡の複合であった。
結論
追跡期間中央値39.6ヵ月で、正常高値カリウム戦略の一次エンドポイント効果を認めた(22.7% vs. 29.2%、HR 0.76)。
高カリウム血症または低カリウム血症による入院の発生率は両群同等であった。
評価
心不全や心筋梗塞後患者を対象とした過去の大規模試験(RALES・EPHESUS等)では、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の投与が突然死リスクを低減することが示されていたが、その機序は完全には解明されていなかった。本研究は、MRAの投与によってもたらされる血漿カリウム濃度の上昇が、その有益効果の主因である可能性を初めて示し、また、心不全の有無にかかわらず、心室性不整脈リスクが高い患者全体に同治療戦略が有効である可能性をも示唆した。限界は、単一施設オープンラベル試験であること、ICD装着患者のみを対象としていること、参加者の大多数がヨーロッパ系であること、である。