急性上部消化管出血を呈する肝硬変患者での予防的抗菌薬に疑問符
Prophylactic Antibiotics for Upper Gastrointestinal Bleeding in Patients With Cirrhosis: A Systematic Review and Bayesian Meta-Analysis
背景
肝硬変患者での静脈瘤出血は、細菌感染を引き起こし、慢性肝不全の急性増悪、再出血、死亡のリスクを高める可能性がある。このため複数の国際ガイドラインが、急性上部消化管出血を呈する肝硬変患者に対して5〜7日間の予防的な抗菌薬投与を推奨しているが、その根拠となっているエビデンスには古いものが多い。
カナダMcGill UniversityのProstyらは、この推奨が現在までのエビデンスによっても支持されているかどうかを検証するため、肝硬変と上部消化管出血を呈する患者において予防的抗菌薬投与の異なる期間(または無投与)を比較した、2024年9月までに公表されたRCTを特定し、全原因死亡率についての非劣性を評価する系統レビュー・メタアナリシスを実施した。
結論
1,322名の患者を登録した、計14件のRCTが含まれた。登録患者のうち、90.9%は静脈瘤を原因としていた。2件の試験は長い投与期間(5〜7日)と短い投与期間(2〜3日)を比較、12件は投与あり(1〜10日)と投与なしを比較した。
短い投与期間および投与なしが、全原因死亡率について非劣性である確率は97.3%であった(リスク差 0.9%)。短い投与期間が、早期の再出血について非劣性である確率は73.8%であったが(リスク差 2.9%)、細菌感染症の増加とも関連した(リスク差 15.2%)。
2004年以降に発表された研究では、これら3つのアウトカムすべてについて、短い投与期間が非劣性である確率が高かった。
評価
急性上部消化管出血の肝硬変患者における予防的抗菌薬を検証した新たなメタ解析であり、短い投与期間または無投与が、長期投与に劣らない可能性を示唆した。
対象となった試験の半分以上は20年以上前のもので、ガイドラインの推奨を再検証するためにも、近年の管理の改善を反映した質の高いRCTが求められている。