心不全治療に再びジギトキシンを:DIGIT-HF試験
Digitoxin in Patients with Heart Failure and Reduced Ejection Fraction
背景
強心配糖体ジギトキシンは2世紀にわたり心不全治療に用いられてきたが、現在の標準治療(β遮断薬・ACE阻害薬・ARNI・SGLT2阻害薬等)との併用における有効性は十分に確立されておらず、特に、HFrEF患者に対する有効性については、依然として議論が続いている。
ドイツHannover Medical SchoolのBauersachsら(DIGIT-HF)は、ガイドラインに従った薬物療法を6ヵ月以上受けている症候性HFrEF患者1,212名を対象を、ジギトキシン追加またはプラセボに割り付けるRCTを行った。
一次エンドポイントは、全死因死亡・心不全悪化入院であった。
結論
中央値36ヵ月の追跡で、ジギトキシンの一次エンドポイント効果を認めた[39.5% vs. 44.1%(HR 0.82)]。
重篤有害事象は、実薬群で4.7%、プラセボ群で2.8%に発生した。
評価
心不全におけるジゴキシン使用に疑問を付した1997のDIG試験(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJM199702203360801)は、強心配糖体全体への忌避につながったが、この流れをせき止め、ジギトキシンという古典的薬剤が、現代の心不全治療においても依然として有効な選択肢であることを示した。両者の最大の差異は、ジギトキシンが腎機能低下の影響を受けにくいという点だが、ここでの結果がすべてその点に起因するかどうかは明らかでない。現在ARNI・SGLT2阻害薬等の導入で心不全治療のランドスケープは変わっているが、この試験は近年の他試験と比べ、参加者のNYHAクラスIII・IV率が高い。これは、進行心不全患者に対する追加治療として、ジギトキシンが有力な選択肢となりうることを示している。

