舟状骨骨折疑い例でギプス固定は必要か?:SUSPECT試験
Can we avoid casting for suspected scaphoid fractures? A multicenter randomized controlled trial
背景
舟状骨骨折は、初期の単純X線では骨折線の確認が難しい場合があり、X線上で確認できなくとも、受傷機転や嗅ぎタバコ窩の圧痛などで舟状骨骨折を疑うケースでは、ギプスによる固定を行うのが通例となっている。
オランダErasmus MC University Medical CenterのCohenら(SUSPECT)は、同国9施設の救急外来を受診し、舟状骨骨折が疑われるものの、初回X線が正常であった成人患者を、3日間の包帯固定、または2週間のギプス固定へと割り付け、3ヵ月時点での上肢の機能的アウトカムを比較するRCTを実施した(n=185)。
一次アウトカムである上肢の機能的アウトカムは、Quick Disabilities of the Arm, Shoulder, and Hand質問表により測定された。
結論
180名のうち、舟状骨骨折と認められたのは16名であり、骨癒合不全は認められなかった。
3ヵ月時点での包帯固定群の機能的アウトカムは、ギプス固定群に非劣性であった(QDASHスコアの調整済み推定差 0.30)。
そのほかの機能・疼痛に関する患者報告スコアにも有意な差は認められなかった。2週間後の可動域は包帯固定群の方が良好であり、治療満足度も包帯固定群で高かった。
評価
初期X線が正常な舟状骨骨折疑い患者のうち、フォローアップで骨折が認められるのは10%程、というデータを基に、包帯固定の非劣性を検証した試験であり、包帯固定によっても骨癒合不全は増加せず、治療満足度も高いことが示された。
フォローアップ検査が保証されている環境では、包帯固定は合理的な選択肢となりうる。