PCI後早期の単剤療法への移行は不可:NEO-MINDSET試験
Early Withdrawal of Aspirin after PCI in Acute Coronary Syndromes
背景
PCI後の急性冠症候群(ACS)患者には、アスピリンとP2Y12阻害薬(チカグレロルまたはプラスグレル)による12ヵ月間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)が標準治療だが、この概念へのチャレンジは続いている。
ブラジルHospital Israelita Albert EinsteinのLemosら(NEO-MINDSET)は、同国50施設において、PCI後のACS患者3,410名を、PCI後の入院4日以内にアスピリン中止し、P2Y12阻害薬の単剤療法を行う群とDAPTを12ヵ月間受ける群に割り付ける非劣性RCTを行った。
エンドポイントは、全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中・緊急標的血管再血行再建術(TVR)・大出血または臨床的に重要な非大出血(CRNM)の複合であった。
結論
早期アスピリン中止・P2Y12阻害薬単剤療法は、DAPTに比べて、複合エンドポイントにおいて非劣性を示さなかった。単剤療法はDAPTに比べ、出血イベントリスクは減少した(4.5% vs.9.0%)。ステント血栓症は単剤療法群12名でDAPT群4名に発生した。
評価
単剤療法への移行は重要テーマで多くのRCTが行われており、メタアナリシスも複数ある(https://www.mdpi.com/2077-0383/9/3/680;https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.046251)。この研究は、PCI後入院4日以内という最も虚血リスクが高い時期からアスピリンを中止する戦略に関する初めての本格検証だが、非劣性を示せなかった。単剤療法群ではステント血栓症の発生率が高く、これは、PCI後の超急性期〜亜急性期における血栓形成を抑制するためには、アスピリンとP2Y12阻害薬の相乗効果が不可欠であることを強く示唆しており、PCI後早期からの単剤療法という「攻めの」戦略が、虚血性イベントに対しては不十分であることを明らかにした。今後のガイドラインは、早期のDAPT中止を追求するよりも、患者の個別リスクプロファイルをより詳細に評価し、最適な治療期間を決定するという方向に進むとみられる。