困難気道で咽頭留置した気管内チューブにより換気する:TTIP法
Effectiveness of Ventilation via an Endotracheal Tube in Pharynx Versus a Facemask in Patients With Potentially Difficult Airway: A Randomized, Crossover, and Blind Trial
背景
「挿管不能かつ酸素化不能(Cannot intubate cannot oxygenate: CICO)」は気道確保困難事例の極限であり、レスキュー法としては外科的気道確保が推奨されているものの、成功率は低い。Tracheal tube tip in the pharynx(TTIP)法は、気管内チューブを盲目的に挿入し、声門上部に留置した後、両手で口と鼻を抑えて換気を行う手法で、CICOでの換気法として注目されている。
アメリカUniversity of Texas Health Science Center at HoustonのMarkhamらは、気道確保困難が予想される患者(n=147)を、麻酔導入後にTTIP換気に続けてマスク換気を各1分間行うチューブ・ファースト、またはマスク換気に続けてTTIP換気を行うマスク・ファーストへと割り付け、換気成功(カプノグラフィで最初3回以内にCO2観測)率を比較するクロスオーバーRCTを実施した。
結論
換気成功率はTTIP換気で93.4%、マスク換気で84.6%であった。TTIPでの換気不全のうち、85.7%(6/7)がマスク喚起によってレスキュー可能であり、対してマスク喚起での換気不全のうち、100%(13/13)がTTIPでレスキュー可能であった。
評価
気管内チューブによって舌から喉頭蓋までをバイパスし気道閉塞を回避する手法で、「貧者のLMA」の名で報告されたこともある(https://doi.org/10.1007/BF03028314)。
このランダム化研究でもマスク換気と同等の成功率を示し、困難気道、特にマスク換気が失敗した場合の有効なレスキュー・オプションとみられる。