「生きた弁」による弁置換が成功
Partial Heart Transplant for Congenital Heart Disease

カテゴリー
循環器、Top Journal
ジャーナル名
The Journal of the American Medical Association
年月
August 2025
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開始ページ
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背景

小児の心臓弁膜症治療において、既存の人工弁やホモグラフトは成長能力がないため、患者の成長に伴い複数回の再手術が必要となる。
アメリカDuke UniversityのOverbeyらは、この課題を解決するため、成長する心臓弁を提供する新しい治療法として、部分心臓移植(生体弁置換術)を考案し、同手術を施行した先天性心疾患患者19名(移植時の平均年齢 97日)の症例シリーズを報告し、安全性・有効性を評価した。維持免疫抑制療法は、タクロリムス単剤療法であった。

結論

移植された全ての弁が機能的耐久性と成長能力を示した。追跡期間中央値26週の時点で、弁関連再手術を必要とした患者はいなかった。弁輪径と弁尖長の測定により、移植弁が患者の成長に合わせて生体組織として実際に成長していることが確認された。弁輪径の中央値は大動脈弁で7 mmから14 mm、肺動脈弁では9 mmから17 mmに増加した。弁尖長も同様に、大動脈弁で0.5mmから1mm、肺動脈弁で0.49mmから0.675mm増加した。
1名で、移植弁とは無関係の再手術が必要となった。免疫抑制に関連する重大な合併症は認められなかった。

評価

「生きた弁が成長する」というコンセプトで行われた弁移植の、ランドマーク報告である。生涯にわたる複数回の再手術の必要性を減らし、患者のQOL向上とリスク低減に大きく貢献する。この手法はまた、ドナー臓器の有効活用という観点からも重要である。全心臓移植に適さないドナー心臓や、全心臓移植を受けた患者から摘出された心臓の弁を活用するドミノ移植やsplit rootといった革新的な手法により、ドナープールを拡大できる。これは、小児移植における臓器不足という深刻な問題に対する有望な解決策となり得る。最大の課題は免疫抑制剤の継続使用であり、また半月弁以外への展開はチャレンジングである。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(循環器)

Journal of the American College of Cardiology(JACC)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、American Heart Journal (AHJ)、Circulation、The Journal of the American Medical Association(JAMA)