酷暑での扇風機使用 水分補給が重要
Electric Fan Use With Dehydration in Extreme Heat and Humidity: A Randomized Crossover Trial
背景
近年の気候変動により、夏の熱波による関連死が世界的に急増している。エアコンの普及率が低いヨーロッパで特に注目されているのは、気温が一定温度を超えると扇風機の対流による熱取得が発汗による冷却を上回り、かえって有害になるという理論・モデルである。
オーストラリアUniversity of SydneyのGrahamらは、脱水症状がこのモデルに与える影響を検討するため、男女10名ずつの参加者に対し、正常な水分補給状態、または脱水状態で、扇風機あり、または扇風機なしの人工気候室(温度39.2 °C, 相対湿度49%)に3時間滞在してもらい、直腸温・心拍数・全身発汗量などを評価するランダム化クロスオーバー試験を実施した。
結論
心拍数に加え、熱的快適性(thermal comfort)、温熱感(thermal sensation)に関しては、扇風機の使用と水分補給状態に有意な相互作用が認められた。深部体温、全身発汗量、口渇に関しては扇風機使用と水分補給状態は相互作用せず、特に全身発汗量は水分補給状態にかかわらず、扇風機の使用により有意に増加した。
また、扇風機の有無にかかわらず、脱水状態は温熱、心血管、主観的マーカーを大幅に悪化させた。
評価
温熱感の改善、水分補給に伴う不快感の軽減という扇風機の利点は、脱水状態では消失した。脱水下では、扇風機使用の有無にかかわらず、心拍数・深部体温が上昇し、さらに扇風機による発汗促進がかえって心血管への負荷を増大させる可能性が示唆された。
エアコン普及率が90%を超える日本では諸外国ほど切迫したテーマではないが、体温を超える気温が頻発し、さらに若年層を中心にハンディファンの使用も増える中で、水分補給という基本を強調するデータとして重要だろう。

