カフ式血圧計によるSBP過小評価の原因を解明
Underestimation of systolic pressure in cuff-based blood pressure measurement

カテゴリー
循環器
ジャーナル名
PNAS Nexus
年月
August 2025
4
開始ページ
pgaf222

背景

聴診法は非侵襲的血圧測定のゴールドスタンダードだが、収縮期血圧(SBP)を過小評価し、拡張期血圧(DBP)を過大評価するという系統的誤差があり、DBPの誤差原因が解明されている一方、SBPの過小評価の原因は不明であった。
イギリスUniversity of CambridgeのBassilらは、腕式(カフ式)血圧計によるSBP誤差の原因を独自の物理モデルを用いて解明した。

結論

カフによって動脈を閉塞した際に生じる、下流血管系の低圧がSBPの過小評価の主な原因であった。カフがSBP以上に膨らむと、下流の血流が遮断され、圧力が低く一定の値にまで低下する。この低圧が動脈の再開通を遅らせ、その結果として測定値が実際の血圧より低く記録される。
この発見は、測定前に腕を上げるなどの簡単なプロトコル変更で、高価な新機器を導入することなく測定精度を向上させ、高血圧の見逃しを減らす可能性を示唆している。

評価

長年未解明であった聴診法によるSBPの過小評価の物理的メカニズムを明確にした画期的な研究である。SBPの過小評価により、SBP 140 mmHg以上の患者の30%が見過ごされる可能性があるという(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15472497/)。
さらに、高度機器の導入によらず既存の測定法を改善するだけで収縮期高血圧の見逃しを防ぐ具体的手法も示しており、実用性は非常に大きい。今後、この理論・効果が確認されれば、高血圧の診断・管理のランドスケープが変わりえる。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(循環器)

Journal of the American College of Cardiology(JACC)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、American Heart Journal (AHJ)、Circulation、The Journal of the American Medical Association(JAMA)