神経保護薬nerinetideに急性期脳梗塞への「条件付き」効果?:ESCAPE-NA1
Efficacy and safety of nerinetide for the treatment of acute ischaemic stroke (ESCAPE-NA1): a multicentre, double-blind, randomised controlled trial
背景
NerinetideはPSD-95(シナプス後肥厚部の足場タンパク質)を阻害するエイコペプチドであり、動物実験レベルで梗塞能に対する神経保護作用が示されている。カナダUniversity of CalgaryのHillら(ESCAPE-NA1)は、急性期脳梗塞患者1,105名を対象として、同薬の効果を検証する第3相試験を行った。全例に血栓回収術を行い、適応がある場合にアルテプラーゼ静注、次いでnerinetide静注群とプラセボ群に無作為に割り付けた。一次エンドポイントは、90日時点でのmodified Rankin Scale(mRS)0〜2点である。
結論
Nerinetideに一次エンドポイント効果を認めなかった。ただし、アルテプラーゼ非投与群では、mRS 0〜2点はnerinetide群で59.3%、プラセボ群で49.8%と有意差を認めた。有害事象は両群で同等であった。
評価
ペプチド性神経保護薬に関する初めての大規模RCTだったが、一次エンドポイント無効であった。rt-PA非投与例での効果は、rt-PAがnerinetideの有効濃度を低下させたことによると考察されている。筆者らは血栓溶解療法非適応例における導入の可能性を示唆しているが、別建ての検証が必要であろう。