ブトリシランのATTR-CMへの効果を心臓バイオマーカーで評価する:HELIOS-Bサブ解析
Impact of Vutrisiran on Cardiac Biomarkers in Patients With Transthyretin Amyloidosis With Cardiomyopathy From HELIOS-B
背景
HELIOS-B(https://doi.org/10.1056/NEJMoa2409134)は、トランスサイレチン型アミロイドーシス心筋症(ATTR-CM)へのRNA干渉治療薬ブトリシランの効果・安全性を確立した。
アメリカColumbia UniversityのMaurerらは、ATTR-CM患者655名を対象とした同試験のデータを用い、同疾患の伝統的バイオマーカであるNT-proBNPとトロポニンI/Tが、現代の最新治療下においても予後予測因子として有用であるか、またブトリシランがバイオマーカー値にどのような影響を与えるかを評価した。
結論
ベースラインのNT-proBNP・トロポニンI値は、心血管イベントおよび全死因死亡のリスクと独立して関連していることが示された(P<0.0001)。ベースラインからのNT-proBNP値が高いほどリスクも上昇し、治療開始から6ヵ月後のバイオマーカー値の変化も予後と関連があった。特に、NT-proBNPの増加はリスクの上昇を、トロポニンIの減少はリスクの低下と関連していた。
ブトリシラン投与群では、プラセボ群と比較してNT-proBNPとトロポニンIの両方が安定もしくは減少する傾向を示し、30ヵ月後には両バイオマーカーの幾何平均変化率がプラセボ群と比較して32%減少した。
評価
次世代RNAi薬の時代に入ったATTR-CM治療においても、NT-proBNPとトロポニンIが依然として強力な予後予測因子であることを再確認した。特に、プラセボ群で両バイオマーカーが増加する中で、ブトリシラン群では減少傾向を示したことは、本薬剤が病態進行を抑制している強力なエビデンスとなる。ここでの結果は、早期治療開始の重要性も示唆し、また、バイオマーカーによる定期的モニタリングの有用性を裏付ける。