小児市中肺炎の重症度予想モデルを国際開発
Predicting paediatric pneumonia severity in the emergency department: a multinational prospective cohort study of the Pediatric Emergency Research Network

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
The Lancet Child & Adolescent Health
年月
June 2025
9
開始ページ
383

背景

市中肺炎(CAP)は小児の入院理由の上位を占める一般的な感染症である。重篤な結果に至る患者はわずかであり、不要な検査や治療を最小化するために正確なリスク層別化ツールが求められている。
アメリカAnn and Robert H. Lurie Children's Hospital of ChicagoのFlorinらは、世界14ヵ国73ヵ所の救急外来でCAPの臨床診断を受けた3ヵ月から14歳未満の小児(n=2,222)を対象とした前向コホート研究を行い、軽症・中等症・重症CAPを弁別するリスク予測モデルを開発した。

結論

含まれた患者の年齢は中央値3歳、軽症CAPが58.1%、中等症CAPが36.5%、重症CAPが5.4%であった。
中等症/重症CAPと鼻閉・鼻漏は負に相関し(調整済みオッズ比 0.59)、対して、腹痛(1.52)、水分拒否(1.57)、救急受診以前の抗菌薬投与(1.64)、胸部陥凹(2.86)、年齢95パーセンタイル値を超える呼吸数(1.63)、年齢95パーセンタイル値を超える心拍数(1.64)、低酸素血症(酸素飽和度90〜92%でオッズ比 3.24, 90%未満で13.39)が正に相関した。
これらの変数からなるモデルは、軽症CAPと中等症/重症CAPをc統計量0.82の精度で弁別した。X線画像で確認されたCAP患者についても同様であり、呼吸音減弱と多発陰影が追加の予測因子となった(c統計量 0.82)。

評価

国際コホートのもと、小児CAPにおける重症化リスク予測モデルを開発した。ラボデータを必要としない点で利用可能性が高く、臨床医のゲシュタルトを上回る精度を示している。
外部検証で再現されれば、小児CAPの診療における強力なツールとなりうる。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)